吉本ばななの短編小説『キムチの夢』にこういった一節があります。
「いいですか、言わせてもらいますけれど、一度浮気した男は、必ずまた繰り返します。私はよく知っています、あの人はそういう人です。弱いんです」
男の妻が愛人にいった捨てぜりふです。
また、こういう手紙をもらったこともあるのです。
「毎日、毎日、待っていました。あなたのいることはずいぶん前から知っていました。でも私は毎日起きて待っていました」
これも男の妻が愛人に書いてきた重い言葉ですが、このどちらも愛人の胸に突き刺さります。
ある意味では愛人も妻と同じ心情で、果たして男がいつまで自分のところに通ってくれるか、保証のかぎりではありません。
妻がいながら自分に心を移した男は間違いなく浮気であり、次は自分がいながら、別の愛人に心を移す番だからです。
しかしこれを先走って彼を疑ってしまっては、愛など実るわけがありません。
そこで我慢強い女性ほど、不倫ではソツなく立ち振る舞えるか可能性が高いのです。
また彼の奥さんから手紙で「彼を待ちつづけ、いまでも待っている」と訴えられたら、気の短い、感情の振幅の強い女性であれば激しく動揺し、彼に向かって、
「早く奥さんと別れて。私のところにこんな手紙が来るようでは耐えられないわ」
と涙ながらに口説くかもしれません。